江戸風俗語のひつじ

ひつじ話

ひつじ
髪結のこと。髪で喰べているところから紙を食う未と洒落て云ったので、其頃の通り言葉。
大津絵節の十二支芝居づくしにも「羊はお駒さんの色男」とあり、城木屋の娘お駒の情人才三が、浪人して髪結となっているところから唄ったもの。

歌舞伎狂言の脚本をもとにした江戸語事典から、「ひつじ」を引いてみました。例として挙げられているのは、「恋娘昔八丈」ですね。先日、「誹風柳多留」をご紹介しましたが、羊といえば紙、というのは、どうもよほど強力なイメージのようです。

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井上靖 「蒼き狼」

ひつじ話

 成吉思汗がその意見を訊いた者たちの中で、際立って他と異った意見を具申した者は、武将のジェベと愛妃忽蘭(クラン)であった。曾て成吉思汗を狙撃した不敵な若者は、その鏃のような形をした頭の中から、モンゴルの民が誰一人考えたことのなかったある一つのことを、石ころでも取り出すように無造作に取り出して成吉思汗の前に置いた。
「モンゴルの民は羊を捨てなければならぬ。羊がある限り、モンゴルに倖せは来ないだろう」
 (略)
「卜占は余の最もよくするところのものである」
「しからば、余のために占え。モンゴルの蒼き狼たちはいまいかなる運命を持たんとしているか」
「モンゴルの民を占うはモンゴルの民に行われる方法によるべきであろう。羊の肩胛骨一片を我に与えよ」
 耶律楚材の求めに応じて、成吉思汗は羊の肩胛骨を持って来させた。すると彼は、帳幕の外に出て、石のかまどを築き、そこで羊の骨を焼き、その上で裂かを調べた。

井上靖の、チンギス・ハーンの生涯を描いた小説「蒼き狼」です。最初が、チンギスが長城を越えてへの侵略を決意する場面。つぎが、捕虜の一人として現れた耶律楚材との出会いの場面です。

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「柳毅伝」陳舜臣版

ひつじ話

「あなたはなにを好んで、こんな仕事をなさっているのですか?」
 と、柳毅は訊いた。
 当時の人たちは、羊飼いを賤しい職業と考えていた。史書によく皇帝の末裔が羊を飼っていた、という記述がある。後漢初、赤眉軍の看板になった劉盆子もそうだが、落ちるところまで落ちた、ということであろう。農耕民が牧羊の民より一段上である、という価値観も作用しているようだ。
 (略)
 雨工という獣が登場するが、『唐書』「五行志」に、乾符三年(876)、洛陽建春門外に、暴雨とともに羊のごとき物が降り、これが雨工であろう、という記述がある。
 竜巻にまきあげられた羊が、空から降ったのであろうが、当時の人びとにとっては大きなショックだった。

唐代伝奇集の「柳毅の物語」をご紹介したことがあるのですが、こちらは陳舜臣の、解説を加えてわかりやすく語り直された「ものがたり唐代伝奇」です。羊がなんで水妖なのか、じつはずっと謎だったんですが、竜巻にまきあげられて、というのは・・・なるほど・・・。

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「ひつじがいっぴきおひるねしてる」

ひつじグッズ

「ひつじがいっぴきおひるねしてる」
ひつじが いっぴき おひるねしてる
どんな ゆめを みているのかな?
おひるねしているひつじが ふえれば、
みているゆめも ふえていきます。
どのひつじが どのゆめをみているのか
わかるかな?

おくのりょうこの絵本です。最初の昼寝羊は一匹。つられて二匹。さらに三匹。みんなそれぞれいろんな夢を見るのですが・・・?

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英国で人気のヒツジレース 特訓の成果は…

ひつじ春夏秋冬

英国で人気のヒツジレース 特訓の成果は…
 イギリス・テルフォードで7日、恒例のヒツジレースが行われた。
 ゲートが開くと同時に、一斉に飛び出した17頭のヒツジたち。背中に毛編みのジョッキーの人形を乗せ、観客の歓声を浴びながら走った。
 ゴールで待っていたのは餌。ヒツジたちは到着するなり一斉に食べ始めた。
 このレースは18年前から毎年開催され、今では人気のイベントとなっている。ヒツジは通常、ジャンプができないため、レースの障害を越えるために特訓したという。

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セントクロイ種

ひつじを見にいく, ひつじ話

セントクロイ種の羊
上野動物園に2002年12月に来園したヒツジのセントクロイ種は、カリブ海の西インド諸島北東部に位置するバージン諸島セントクロイ島で飼育されている、オスメスともに角をもたない白色の品種です。オスにはのど元から胸にかけてふさふさの直毛がたれさがり、一見ヤギとまちがえる人もあります。
(略)
ヒツジの毛はその性質によって、毛髄がなく中空で柔らかく縮れたウール(縮毛)と、ヤギの毛のような堅くまっすぐなヘアー(粗毛)とに分けられます。野生のヒツジの冬毛はウールで、春になると自然に抜け落ちますが、毛用に改良されたヒツジでは、ウールが抜けおちずに伸びつづけます。メリノー種をはじめこのようなヒツジをウールタイプと呼びます。一方、主に熱帯地方に飼われている肉用羊では、産毛能力が改良されていませんから、野生のヒツジと同様、夏には夏毛(ヘアー)に生えかわります。こうしたヒツジをヘアータイプと呼びます。セントクロイはヘアータイプのヒツジですから、冬毛のウールは刈り取らなくてもプラッキングといって、手で引いて取ることができます。その毛はウールですが粗いので、主としてカーペットやロープに使われます。

 「どうぶつと動物園」 

「東京動物園友の会」機関誌、「どうぶつと動物園」平成15年1月号から、限りなくヤギっぽいヒツジの記事を。
「どうぶつと動物園」についての詳細は、「どうぶつ園ファンのためのウェブサイト 東京ズーネット」内、「東京動物園友の会」で見られます。

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「12歳、世界にチャレンジ―雄太君の留学日記」

ひつじ話

 
 サイエンス(科学)の授業はいつも実験室兼用の教室で行われている。授業は人間の体・臓器の学習に入り、人体模型やプリント、教科書で学んでいた。
 けさ、教室に現れたイェイツ先生は、何か塊のようなものを抱えて入っていらした。
 (略)
「解剖のために使う羊の肺、心臓、肝臓そして気管を含めたのどの部分です」という説明!
 
 (略)
 しかし羊たちから多くの糧を得る島国なのだから、家畜をよく知ることは大切なことだと思う。家畜の伝染病予防などにもつながるはずなのだ。
 (略)
 羊の心臓は、食用にスーパーなどでも売っているということだったが、僕は今まで見たことがなかった。心臓の手触りは牛肉や豚肉に触れるのとあまり変わりがない。プヨプヨとしていた。新鮮なものだということだったが、当然その機能はすでに停止している。ありがとうございました。合掌。

世の中には、こうも前向きで努力家な少年がいるものなのですね。12歳で単身ニュージーランドに留学した著者の、楽しくも悪戦苦闘な日々の一こまです。

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「羊木臈纈屏風」 と 「樹下鳳凰双羊文綾」

ひつじ話

「羊木臈纈屏風」
臈纈屏風(ろうけちのびょうぶ) (羊木(ひつじき)) (北倉)
羊木屏風の長さ154.6センチ、幅52.4センチ。材質は絁(あしぎぬ)の臈纈染。 (略) 画面の下端には、「天平勝宝三年(751)十月」の墨書がみられる。これは律令時代に、各国より納められた調絁(ちょうのあしぎぬ)の銘文であると考えられており、これらの屏風が、わが国の官営工房で制作されたことを示す根拠ともなっている。 正倉院宝物
 「樹下鳳凰双羊文綾」
樹下鳳凰双羊文綾(じゅかほうおうそうようもんのあや)
組織は綾地浮文(うきもん)綾。文丈は約20.5センチ。 正倉院宝物

昨日、応挙の「群獣図屏風」ご紹介のさいに参考にした「朝日百科 皇室の名宝」に、ずいぶん前にお話した正倉院のひつじたちがカラーで載ってましたので、改めて。

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円山応挙 「群獣図屏風」

ひつじ話

応挙 「群獣図屏風」左隻 「群獣図屏風」(部分)

円山応挙「黄初平図」をご紹介したことがありますが、こちらは6曲1双の屏風「群獣図屏風」です。左隻の右半分が羊で占められています。三の丸尚蔵館蔵。

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村上春樹 「彼女の町と、彼女の緬羊」

ひつじ話

 僕は枕もとのスウィッチを押してテレビを消し、ビールの残りを飲む。そして彼女の町を訪れることを考えてみる。彼女は僕のために何かをしてくれるかもしれない。しかし結局のところ、僕は彼女の町を訪れはしないだろう。僕は既に、あまりに多くのものを捨ててしまったのだ。
 外では雪が降りつづいている。そして百頭の緬羊は闇の中でじっと目を閉じている。

村上春樹で羊と言えば、「羊をめぐる冒険」羊男ですが、こちらは羊男とは無関係な羊話。旅先のホテルのテレビで、百頭の緬羊を飼う小さな町を紹介する広報課の女の子に見入る主人公。

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「Play With Your Food」

ひつじ話

「Play With Your Food」の「Sheep pear」

食材を動物に見立てて遊びたおした、バチアタリにして愉快なオブジェ写真集です。上のは洋梨製の羊ですね。他にも、「Baby Food」「Dog Food」等々が出ているようです。

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西域の大羊と、李審言の病気

ひつじ話

西域の大羊   僧玄奘(三蔵法師)は西域の大雪山の上で、一村みな大羊を養うのを見た。大きさは驢(ろば)ほどもあった。
        ◇
唐の世。長安の李審言は病気にかかって狂人となり、羊のような動作をする。そしてある日急に外に走り出て郊外の野に行き、羊群の中に入ってその身も羊に化してしまった。跡を追って来た家の人たちがしきりに審言の名を呼んで探すと、一匹が答えて「自分が審言である」と言い、「一緒に帰るから、羊のまま家で養って欲しい。―羊でいるのはとても楽しい」と言った。

十二支動物の説話を大量に収録した「干支物語」から、羊エピソードを二話。「太平広記」からの抄出とのことです。

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漢の高祖と晋の石虎と、羊の夢

ひつじ話

漢の高祖がまだ側微で一亭長にすぎなかった頃、一匹の羊を逐いまわし、その羊の角を抜き、尾を落としたという夢を見ました。羊という字の角にあたる部分を抜き、尾にあたる部分を落としますと、王という字になる、これは他日、王となる吉兆であろうといわれましたが、果たして後に関中の王となり、ついには漢の天子となったのです。
こういった吉夢に反して、晋の石虎は群がる羊が魚を負うて東北からやってきたという夢をみ、その吉凶を仏円澄に問うたところ、羊が魚を負うというのは鮮である、きっと鮮卑が東北から攻めてくる前兆だろうといいました。果たして間もなく鮮卑族から起こった慕容氏が中原を取ることになったということです。

諸橋轍次が、十二支の動物たちにまつわる史実や伝説、ことわざなどを縦横に語っています。未(羊)の章からおもしろいところを抜き出してみたのですが、以前にこれと似た系統で、黄帝が力牧を探し出したお話をしてますね。

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